顎関節症
体にはたくさんの関節があります。それらは、筋肉と一緒に運動し、姿勢の保持などいろいろな働きをしています。ほとんどの関節は、曲がる(回転する)ことにより仕事をしていますが、顎の関節だけは、口を開ける時、回転しながら前へ滑り出すという特異な動きをします。また、口を開けたり、閉じたりするときに、左右の関節が同時に動くわけですから、かみ合わせは、これらの動きを助けるものでなければなりません。支障があると顎関節症になることがあります。 | |
上記の図は顎関節の正常な解剖図です。 顎関節は主に側頭骨関節窩、下顎頭、関節円盤の3つに分けられます。 周りにはそれらを機能させる筋肉、靭帯、弾性繊維またそれらを保護する関節包、静脈叢などの組織があります。 口を開けたり閉めたりすることは下顎頭の運動に他なりません。 |
正常な顎関節の動き 下顎頭は回転運動と滑走を行い口の開け閉めを行っています。 |
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図1 は完全に口を閉じたときの状態です。 すなわち咬んだときの下顎頭の位置です。 |
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図2は口を開けようとする最初の運動(回転運動)です。 |
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図3は口が開いている中間の状態を示しております。 下顎頭は図1の位置から斜め前方に滑走をしております。 このとき回転も加わります。 |
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図4は最大開口(口を一番大きく開いた状態)の位置を示しております。 関節結節を越えて下顎頭が前に行っています。 これ以上は前に行きません。 靭帯(外側靭帯)によりそれ以上、前に行かないように規制されています。 |
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閉じるときは図4→図3→図2→図1と戻っていくのです。 |
顎関節症は… 顎関節の障害には大きく分けて顎関節周囲の障害と顎関節本体の障害に大別できます。 <顎関節の周囲の障害> 1、筋肉の障害 2、関節包および靭帯の障害 <顎関節本体の障害> 3、関節円盤の障害 a、クリッキング b、クローズドロック 4、変形性関節症 <顎関節周囲の障害>について |
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1、筋肉の障害 顎関節の不調和はそれを動かす筋肉に障害をもたらします。 それは痛みやこりといったものに現れます。 痛みはA、何もしなくても痛い(自発痛) B、動かすと痛い(運動痛) C、触ると痛い(圧痛) などがあります。 |
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この中のC、圧痛は筋肉の触診により分かることが多いです。 実際、顎関節の場合は圧倒的にC、圧痛が大半を占めます。 ゆえに顎関節の不調和を見つけるには筋肉の触診が不可欠になります。 触診をする筋肉は一般的に 1)咬筋 2)側頭筋 3)顎二腹筋 4)他 です。 |
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2、靭帯の障害 顎関節に関係する靭帯には 1)外側靭帯 2)蝶下顎靭帯 3)茎突下顎靭帯 これらはそれぞれが機能して下顎の正しい位置ならびに運動範囲の決定を行っています。 ゆえにこれらが障害を起こすと口が開けられない、顎が外れやすくなるなど重篤な症状を起こすことがあります。 とくに障害を起こしやすいのは1)の外側靭帯です。 |
<顎関節本体の障害>について 3、顎関節円板の障害 A、クリッキング(復位を伴うもの) コキコキなどの音が顎関節を動かすと聞こえる人はこのパターンに入ります。 図を見ていただくと理解しやすいと思います。 顎関節は閉口時、開口時とも関節窩と下顎頭の関係は常に関節円板(以後、円板)を介して行っています。 正常な顎関節の動き |
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円板は開閉口時に下顎頭といつも一緒に移動しています。 | ||||
クリッキング(復位を伴うもの)の動き | ||||
円盤は下顎頭に乗りあがったまま一番大きく口を開くことができます。 | 開口時に円盤は下顎頭に乗りあがります(コキと大きな音)。閉口時には円板は下顎頭から落ちてしまいます(コキと小さな音)。 | 関節窩と下顎頭の中にある円版がはずれて前方に偏位している。 | ||
閉口時の下顎頭、円板と関節窩の状態はそれぞれを傷つけるような構造になっています。 下顎頭と関節窩のすき間は円板が逸脱しているために非常に狭くなっています。 ここには円板を引っ張っていた弾性繊維が入り込んでいますので咬んだりすることにより弾性繊維を傷つけています。 また狭くなっているために本来、関節腔を満たしている潤滑液(ヒアルロンサンなどの栄養源)が押し出されているため組織を直す機構が働かないようになっています。 B、クローズドロック(復位を伴わないもの) Aのクリッキングは円板が閉口時に飛び出していて開口時に下顎頭に乗っかるものでした。しかし クローズドロックは開口時も閉口時も円板は終始、下顎頭からはずれている状態のものです。 この円板が開口時に異物(障害)となって口が大きく開けなくなるという症状があります。 正常な顎関節の動き |
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最大開口(関節頭は関節結節を越えて前にいっている) | 中間開口 | 閉口(咬んだ位置) |
クローズドロック(重症) | ||
進行した病的最大開口 クローズドロックが進行するとまずは円板をひっぱていた弾性繊維が切れてしまい、穴があいてしまいます。 その結果、上の骨と下の骨が直接こすりあうことになり骨の表面は塑造となってしまいます。 |
進行した病的閉口 弾性繊維は破れて穴があいてしまっている。下顎頭の骨は関節窩の骨に押し付けられ圧迫され潤滑液(栄養液でもある)であるヒアルロンサンなども排除され常に物理的炎症をおこしている。 |
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このころになると弾性繊維の穿孔(穴が開く)と断裂そして骨の形態変化により骨の表面がざらざらになりジャリジャリ、ピシピシなどの振動と音が聞こえるようになります。 |